宝石のエンハンスメントとは
天然宝石が持つ美しさを引き出すための人工的な処理
のことです!
人工処理の種類は過熱処理や、含浸処理など色々ありますが言わば、
〝宝石に対するエステや化粧〟のようなものです。
今回は宝石のエンハンスメントやトリートメントなど人工処理についてまとめていますので
エンハンスメントを理解してある程度話せるようになりたい
自分の購入時に生かしたい
という人はまずは目次を参考にどうぞ!
この記事を書いた人
- ジュエリーバイヤー歴10年
- 元ジュエリーブランド店長
- 販売接客1000名以上
- Twitterフォロワー数45,000人以上
- NHKオンライン講座講師経験あり
この記事で知れる内容(目次)
・1.宝石のエンハンスメントとは?石は本物なの?天然?人工?
市場に出回る9割は処理石!?
・2.宝石のエンハンスメント前後の見た目や価格の違いは?見分け方は?
・5.人工処理〝エンハンスメント〟と〝トリートメント〟の違い
・6.宝石の人工処理〝エンハンスメント〟の種類一覧
加熱処理
拡散加熱処理
オイル含浸処理・ワックス含侵処理
漂白処理
・7.宝石の人工処理〝トリートメント〟の種類一覧
着色処理
放射線照射処理
樹脂含侵処理・鉛ガラス含侵処理
ガラス充填処理
・8.この記事のまとめ!エンハンスメントや処理をどう考える?良い?悪い?
・1.宝石のエンハンスメントとは?石は本物なの?天然?人工?
宝石のエンハンスメントとは、
天然宝石の美しさを引き出すための人工的な処理
のことです。
エンハンスメントには、
加熱処理
拡散加熱処理
オイル含浸処理
ワックス含浸処理
漂白処理
充填処理
など種類があり、種類によって効果も違いますが、
ざっくりまとめるとエンハンスメントには以下のような効果があります!
宝石の色を変える
宝石の色の明度を変える
宝石内部のインクルージョンを除去(宝石をよりクリアで透明にする)
宝石の光沢感を上げる
宝石に空いている穴や傷をふさぐ
宝石の表面の汚れやシミを除去する
補足:インクルージョン=宝石内部のゴミの様なもの
このような感じです!

そんなに色んな事ができるんだ、、!でもそれってもはや〝天然の宝石〟って言えるの?
エンハンスメントされた宝石はあくまで〝天然の宝石〟として扱われます。
エンハンスメントはあくまで、
自然界であり得る変化を人工的に再現し、美しさを〝引き出す〟ための処理です。
逆に自然界で起こりえない化学的な処理、、例えば〝宝石の上からを色コーティングする〟みたいな場合は〝引き出す〟ではなく完全な化学的処理なので天然扱いにはなりません。
市場に出回る9割は処理石!?
驚く方も多いかもしれませんが、
市場に出回る宝石は9割はなにかしらの人工処理が施されている
と言われます。
確かに仕入れ現場でも人工処理されている石は多いですし、普段使いできるくらいの比較的手頃なショップでは普通に取り扱っています。
人により意見は違うと思いますが、9割が人工処理がされているということは、
ある意味宝石は処理がされているのが普通
みたいなところがあります。
ポイント
エンハンスメントとは天然宝石の美しさを最大限引き出すための人工的処理
色、明度、光沢感、の変更や、内部のゴミ、汚れ、シミの除去、傷や穴をふさぐことが出来る
あくまで自然界で起こりうる変化を人工的に再現するため天然扱い
人工処理の石は市場の9割
・2.宝石のエンハンスメント前後の見た目や価格の違いは?見分け方は?
左:エンハンスメント前 | 右:エンハンスメント後 |
引用元:GIA公式サイト https://www.gia.edu/JP
例えば↑はインペリアルトパーズの結晶ですがエンハンスメント前と後でこのくらいの違いがあります。
これはあくまで一例、サンプルですが、結構見た目が変わるものとそこまで変わらないもの様々です。
ちなみにアメシストは、加熱することでシトリンに変えることができます。
この画像はあくまでサンプル、イメージです。
アメシストとシトリンは基本的には同じ鉱物ですが、
アメシストとして産出されるものも、シトリンとして産出されるものもあります。
ざっくり説明すると、
地中で生成される際の温度が低めだった場合=アメシスト(紫色)として産出
地中で生成される際の温度が高めだった場合=シトリン(黄色)として産出
となるわけです。
なので熱処理によってアメシストにも、シトリンにもできるわけです。
人工的に着色料などを使って色を付けているのではなく、
自然界であり得る変化(熱を加える)を人工的に再現し、美しさを引き出しており、
エンハンスメント、主に熱処理した宝石はあくまで〝天然石〟として扱われます。なので
エンハンスメントがされた宝石だからと言って宝石そのものの価値が落ちるということはありません。
ただ、記事後半で解説する同じく人工処理の〝トリートメント〟に関しては価値に影響がありますのでそれは記事後半に。
ポイント
エンハンスメントをすることで見た目は大きく変わるもとそこまで変わらないもの様々
エンハンスメントされてもあくまで〝天然石扱い〟で価値は落ちない
・3.エンハンスメントは鑑別書にはどのように記載される?
まず宝石の鑑別書、鑑定書の類は鑑別機関によって様々ですが、
今回は世界的に権威性の高い2つの鑑別機関の鑑別所を見てみましょう!
GIA
引用元:GIA公式サイト https://www.gia.edu/JP
GIAの鑑別書はこちら!※見えにくい場合は画像を指でズームしてください
鑑別書内の
TREATMENT|Scan QR code for more infomation
Heated
がエンハンスメント、処理に対する記載です。
Heatedということは〝熱処理が施されている〟ということになります。
Heatedの記載のほかにも
No indications of Heating(加熱の痕跡無し)
No indications of Clarity enhanced(透明度を処理した痕跡なし)
Clarity enhanced(透明度を処理している)
などの記載があります。
その他詳しい情報は各鑑別書についているQRコードを読み込むことでさらに詳しく見ることができます。
ポイント
GIAは世界で最も権威性があり世界で広く使われているアメリカの宝石鑑定・鑑別機関です。
中央宝石研究所
引用元:中央宝石研究所公式サイト https://www.cgl.co.jp
中央宝石研究所の鑑別所はこちら!※見えにくい場合は画像を指でズームしてください
鑑別書内の
加熱の痕跡は認められません
がエンハンスメント、処理に対する記載です。
言葉の通りで〝熱処理が施されてない(現代の技術では加熱した痕が見つからない)〟ということになります。
逆になにか処理がされている場合、
○○が行われています
のように記載されます。
またさらに詳しく〝備考〟の欄に書かれる場合もあります。
ポイント
中央宝石研究所は日本で最も権威性があり国内で広く使われている日本の宝石鑑定・鑑別機関です。
・4.エンハンスメントが特に多い宝石一覧
宝石には数多くの種類が存在しますが、
その宝石が持つ特性上、どうしてもエンハンスメントに頼りがちになる宝石も存在し、
エンハンスメントされていることが一般的のような宝石
もあります。
購入時の参考にもなるようにエンハンスメントが多い宝石を一覧でピックアップしておきます!
エメラルド
ルビー
サファイア
モルガナイト
アクアマリンなど
このあたりの宝石はエンハンスメントが良く行われており、市場に出ているものもエンハンスメントされているものが多いです。
ポイント
エメラルド、ルビー、サファイア、モルガナイト、アクアマリンなどはエンハンスメントがされている場合が多い
・5.人工処理〝エンハンスメント〟と〝トリートメント〟の違い
宝石に対する人工的処理には
〝エンハンスメント〟と〝トリートメント〟
という2つの括りがあります。
この2つは何が違うのかをざっくりいうと、
エンハンスメントがされた石
→自然界であり得る変化を人工的に再現。天然石扱いで価値も落ちない
トリートメントがされた石
→自然界で起こりえない化学的な人工処理をする。もはや天然石ではなく処理石扱いで価値も落ちる
という違いがあります。
人間に例えると、
エンハンスメント=エステや化粧の類で元を活かして良くする
トリートメント=整形手術の類で元を変える
くらいの違いがあるという風にも言われます。
※あくまで例えで整形手術を否定しているわけではありません。
ポイント
エンハンスメントは天然石として価値も落ちないがトリートメントは処理石になり価値も落ちる
・6.宝石の人工処理〝エンハンスメント〟の種類一覧
加熱処理
1,000度以上の高温で加熱し、
宝石自体の色を引き出す(変える)人工処理
人間の手で
〝地中で宝石が生成される際の環境を再現〟
することで着色料などを使って色を付けたわけではない。
加熱処理が良く行われる宝石
ルビー、サファイア、アクアマリン、モルガナイト、トパーズ、アンバーなど
拡散加熱処理
加熱処理時に他の元素を加え、宝石の表面や内部に拡散、浸透させることで
色を変える人工処理
拡散加熱処理が良く行われる宝石
サファイア、ルビー
オイル含浸処理・ワックス含侵処理
オイルやワックスを宝石に染み込ませ
透明度を良くしたり、光沢感を高めたり、色を変えたりする人工処理
エメラルドは特に〝オイル含侵処理の代表的な宝石〟で市場のほとんどのエメラルドはオイル含侵処理が施されています。
含侵処理が施されていないエメラルドは〝ノンオイル〟と呼ばれ非常に貴重で価値が高いです。
含侵処理にも種類がありますが、オイルとワックスを使った含侵処理は〝天然石扱い〟です。
オイル含浸処理・ワックス含侵処理が良く行われる宝石
エメラルド、ヒスイ、ルビー
漂白処理
宝石表面の汚れやシミを取り除く人工処理
主に真珠(パール)に行われており、市場のほとんどのパールにはこの漂白処理が行われています。
漂白処理が良く行われる宝石
真珠(パール)
・7.宝石の人工処理〝トリートメント〟の種類一覧
着色処理
人工的に宝石に色素を加え色を変える人工処理
加熱処理とは違い〝色素を加える〟ため天然石ではなく処理石扱いで物にもよりますが価値も落ちます。
着色処理が良く行われる宝石
真珠(パール)、ターコイズ、ラピスラズリ、アゲート
放射線照射処理
宝石に放射線を浴びせることで結晶構造をいじることで
色合いを変える人工処理
放射線照射処理が良く行われる宝石
トパーズ、カラーダイヤ、トルマリン
樹脂含侵処理・鉛ガラス含侵処理
樹脂やガラスを宝石に染み込ませ、
透明度を良くしたり、光沢感を高めたり、色を変えたりする人工処理
安価で流通しているルビー、エメラルド、サファイア、ダイヤは鉛ガラス処理がされていることが多いです。
含侵処理にも種類がありますが、樹脂とガラスを使った含侵処理は〝処理石扱い〟です。
樹脂含侵処理・鉛ガラス含侵処理が良く行われる宝石
ルビー、エメラルド、サファイア、ダイヤ
ガラス充填処理
宝石の穴や傷をガラスなどを用いて塞いだり、透明度を上げたりする人工処理
宝石をカットする際に穴や傷をよけてカットしますが、それだとどうしても使える部分が少なくサイズダウンしてしまうため行われることが多いです。
ガラス充填処理が良く行われる宝石
ルビー、サファイア、エメラルド
・8.この記事のまとめ!エンハンスメントや処理をどう考える?良い?悪い?
結論から言うと
良いか悪いかはその人の判断次第
です。
判断材料になりそうな情報を今回の記事からピックアップしてまとめておきます!
市場の宝石の90%がなんらかの人工的処理はされている
エンハンスメント(自然界では起こりえる人工的処理)がされた石は天然石扱い
トリートメント(自然界では起こりえない人工的処理)がされた石は処理石扱い
個人的にはエンハンスメントもトリートメントも商品によりますがそこまで気にしないです。※否定的な意見の人もいるかもしれませんが、、
ある程度価格が安価な物
→『これはトリートメントされた石、ジュエリーとしての価値は低いかもしれない』と理解しつつ、ファッション要素や色を楽しむ!
僕はデザイン性や独自性の高いものや、作りの美しさなど〝宝石として以外の面〟に惚れたものは特に処理などは気にしないですね。
ある程度高額な物
→鑑定書などで詳細を確認したりして詳細を理解して楽しむ!
みたいな感じで良いかなと思っています。
石の質や処理
石の見た目の良さ
処理の有無・レア度・価値
ファッション性やデザイン性
このあたりのバランスが大事ですね!
ちなみに参考になるかわかりませんがこういった傾向があるのも覚えておくと良いかもしれません!
処理の無しで希少性も価値も価格も高い宝石
→クラシカルな王道デザインのジュエリーにされることが多い
処理の有りで価格が安価な宝石
→ファッション性やデザイン性の高い自由なデザインがされることが多い
ご参考に!
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